辨 |
ヤマブキの八重ざき品種。 |
訓 |
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説 |
ヤマブキと異なり、雄蕊は花瓣化し、雌蕊は退化していて、果実が実らない。 |
誌 |
『万葉集』巻10/1860 に、読人知らずの歌として
花咲きて 実はならねども 長きけ(日)に 念(おも)ほゆるかも 山振(やまぶき)の花
とあるのは、実がならないというからにはヤエヤマブキであろうとされる。
清少納言『枕草子』第67段「草の花は」には、「やへ山ぶき」とある。 |
中世に至り、太田道灌(1432-1486)に纏わる有名な伝説に、道灌が鷹狩りに出てにわか雨に遭い、土地の娘に蓑笠を借りようとしたところ、娘は無言のまま、山吹の一枝を折って差し出した。その場は怒って帰った道灌は、後になってから、それは兼明親王(かねあきらしんのう、914-987)の
ななへ八重花はさけども山吹のみの一つだになきぞ悲しき
という歌(『後拾遺集』(1086)。ここでは「実のひとつ」を「蓑ひとつ」に掛けた)の意だと知り、無学を恥じ、これより大いに歌の道に励んだという(この話は、のちに歌舞伎や落語に発展した)。
その地は後に「山吹の里」と称せられたといい、今日、新宿・豊島区境の面影橋に「山吹の里」碑が立てられているほか、新宿区山吹町の名もこの伝説に基づく。また、荒川区には道灌山が、三河島7丁目には山吹塚がある。 |